成人式に訪問着はおかしい?格式や周囲との調和&選ぶ際の注意点
成人式を控え、母親から譲り受けた大切な訪問着での参加を考えているけれど、「振袖じゃないとおかしいかな?」と不安に感じていませんか。
一生に一度の晴れ舞台だからこそ、服装選びで後悔はしたくない、という気持ちは誰もが持っているものです。
成人式の服装といえば振袖のイメージが強いですが、訪問着を選ぶ際の注意点や振袖との違いを正しく理解すれば、決してマナー違反にはなりません。
むしろ、ご自身の個性やご家族の想いを表現する素晴らしい選択肢となり得ます。
この記事では、成人式で訪問着を着る際の基本マナーから、合わせる小物、振袖以外の選択肢まで、あなたの疑問や不安を解消するために詳しく、そして丁寧に解説します。
- 成人式で訪問着を着ることがマナー違反にならない理由
- 振袖と訪問着の格式やデザインの具体的な違い
- 訪問着を選ぶ際に気をつけたい色や柄のポイント
- 振袖以外で成人式に参加する場合の服装の選択肢
成人式に訪問着はおかしい?
成人式に訪問着で参加するのはおかしいこと?
結論から言うと、成人式に訪問着を着用することは決して「おかしい」ことではありません。
成人式は、古くからの通過儀礼である「元服(げんぷく)」に由来し、社会的な責任を持つ一員として認められるための大切な式典です。
(参照:神社本庁「おまいりする」)
そのため、このお祝いの場にふさわしい格を持った服装で臨むことが何よりも重要であり、訪問着はその条件を十分に満たしています。
確かに、現代の成人式では参加する女性の多くが華やかな振袖を着用しているため、訪問着は少数派かもしれません。
そのため、周囲が振袖ばかりの中で少し落ち着いた印象に見えたり、「どうして振袖じゃないのかな?」と注目されたりする可能性はあります。
しかし、「少数派である」ということと「マナー違反である」ということは全く異なります。
訪問着は振袖に次ぐ「準礼装」または「略礼装」に位置づけられるフォーマルな装いです。
実際に、ご自身の好みで落ち着いた雰囲気で式典に臨みたい方や、成人式を迎える前に結婚された方が訪問着を選ばれることもあります。
大切なのは、TPOをわきまえた服装で、新成人としての門出をお祝いする心を持って参加することです。
ポイント
成人式での訪問着着用はマナー違反ではありません。
未婚女性の第一礼装である振袖とは格式や役割が異なりますが、お祝いの式典にふさわしい服装として全く問題なく認められています。
周りの目よりも、ご自身が納得できる服装を選ぶことが大切です。
振袖と訪問着の違いや選ぶ際の注意点について
訪問着を選ぶ前に、まずは振袖との違いを明確に理解しておくことが大切です。
どちらも「絵羽模様(えばもよう)」という、縫い目をまたいで一枚の絵のようにつながる柄が特徴の格式高い着物ですが、その役割やデザインには明確な違いが存在します。
項目 | 振袖 | 訪問着 |
---|---|---|
格式 | 第一礼装(未婚女性の最も格が高い正装) | 準礼装~略礼装(振袖に次ぐ格、社交着) |
着用者 | 未婚女性のみ | 未婚・既婚を問わない |
袖の長さ | 長い(中振袖で約95cm~114cm) | 短い(標準で約49cm) |
柄の特徴 | 全体に豪華絢爛で若々しい柄が多い | 上半身にも柄があるが、振袖よりは落ち着いた品のある柄が多い |
このように、振袖は未婚女性が着用できる最も格式の高い晴れ着であり、その長い袖と豪華なデザインで若々しさとお祝いの気持ちを表現します。
一方、訪問着は年齢や未婚・既婚を問わず着用できる、より汎用性の高い上品な社交着と言えます。
成人式で訪問着を選ぶ際の注意点
成人式で訪問着を選ぶ際は、いくつか注意したいポイントがあります。
まず、色や柄が地味すぎないかを確認しましょう。
周りの華やかな振袖に見劣りしないよう、ピンクや水色、クリーム色といった明るい地色や、縁起の良い吉祥文様、金彩・刺繍が施されたお祝いらしいデザインのものがおすすめです。
特に、成人式という場では結婚式のような厳密な色のタブーはありませんが、あまりに暗い色調や落ち着きすぎた柄のものは、二十歳の若々しさを表現するには少し寂しい印象になる可能性があります。
母親や祖母から訪問着を受け継ぐケースもある
ご自身の成人式のために、母親や祖母がかつて着た訪問着を譲り受けるのは、世代を超えて思い出をつなぐ、非常に素敵な選択です。
嫁入りの際に揃えた大切な着物や、思い出の詰まった一枚を、娘や孫が晴れの日に身にまとってくれることは、ご家族にとって何物にも代えがたい大きな喜びとなるでしょう。
受け継いだ着物を着る「ママ訪問着」には、費用を抑えられる経済的なメリットに加え、他にはない一点もののデザインで確かな個性を表現できるという魅力があります。
また、その背景にあるストーリーを知る周りの方々からも「ご家族の愛情が感じられて素敵ね」「親孝行で素晴らしい」と温かい目で見てもらえることが多いようです。
譲り受けた着物を着る前に必ず確認すべきこと
ただし、愛情と共に譲り受けた着物を美しく着こなすためには、必ず事前の確認が必要です。
最も重要なのはサイズの確認です。
特に、母親や祖母とご自身の身長が大きく異なる場合、「身丈(みたけ:着物の長さ)」や「裄(ゆき:首の中心から手首までの長さ)」が合わない可能性があります。
数センチの差であれば着付けの工夫で調整できることもありますが、寸法が大きく異なると「おはしょり」が出ない、袖が短すぎる(つんつるてん)といった状態になり、美しく着こなすことが難しくなります。
その場合は「仕立て直し」が必要となり、数万円の費用と時間がかかることも念頭に置いて、早めに呉服店や和裁士の方に相談しましょう。
訪問着に扇子は必要?合わせるアイテムについて
訪問着を成人式で着る場合、どのような小物を合わせれば良いのでしょうか。
全体の印象を左右する重要なアイテムと、その選び方のポイントをご紹介します。
帯や帯締め、帯揚げ
訪問着には、格式の高い「袋帯(ふくろおび)」を合わせるのが一般的です。
金糸や銀糸がふんだんに織り込まれた、重厚感と華やかさを兼ね備えたデザインがお祝いの場にふさわしいでしょう。
帯締めや帯揚げは、着物や帯の色と調和させつつ、差し色になるような明るい色を選ぶと、全体のコーディネートが引き締まり、若々しい印象になります。
半衿・重ね衿(伊達衿)
顔周りの印象を明るくする半衿は、白が基本ですが、お祝いの場では刺繍が施されたものや色付きのものを選ぶとより華やかになります。
さらに、着物と半衿の間に重ね衿を一枚加えることで、コーディネートに彩りと格式をプラスできます。
草履とバッグ
草履とバッグは、セットになったものを選ぶと統一感が出て上品にまとまります。
かかとが少し高めの礼装用の草履と、エナメル素材や帯地を使用したフォーマルなデザインのバッグがおすすめです。
扇子は必須ではない
結婚式で黒留袖を着る際には、礼装用の祝儀扇(末広)を帯に差しますが、訪問着の場合は扇子は必須アイテムではありません。
もし持つのであれば、あくまで装飾品として考え、式典中にあおいだりしないのがマナーです。
譲り受けた訪問着を現代風に着こなしたい場合は、帯締めや重ね衿(伊達衿)、半衿といった小物を新しくするだけでも印象が大きく変わります。
最近ではレース素材やパール付きのデザインなども豊富にありますので、小物で自分らしさを表現するのも楽しいですよ。
訪問着は成人式以外にも幅広く使える
訪問着を選ぶ最大のメリットの一つは、その汎用性の高さにあります。
振袖は未婚の時期にしか着られない特別な衣装ですが、訪問着は年齢や未婚・既婚の垣根を越え、様々なフォーマルシーンで長く活躍してくれる、まさに「一生もの」の着物です。
訪問着が活躍する主なシーン
一度誂えたり、譲り受けたりした訪問着は、成人式を終えた後も、以下のような人生の節目や特別な場面で長く着続けることができます。
- ご友人の結婚式や披露宴への列席
- 会社や団体の記念パーティー、祝賀会
- お子様のお宮参りや七五三(母親として)
- お子様の入学式や卒業式(母親として)
- 格式のあるお茶会や観劇
また、もしお手持ちの振袖があり、結婚後に着る機会がなくなった場合には、その長い袖を短く仕立て直して訪問着にリメイクすることも可能です。
思い出の振袖を新たな形で活かすことができるため、選択肢の一つとして覚えておくと良いでしょう。
成人式に訪問着はおかしい?その他の服装について
成人式で振袖や着物を着ない人の割合は?
成人式といえば振袖姿が象徴的ですが、実際にはどれくらいの人が振袖や着物を着ているのでしょうか。
あるアンケート調査によると、成人式で振袖や袴を着用した(する予定の)女性は90%にのぼるという結果が報告されています。(出典:本きもの松葉「成人式の振袖着用率は73%!?みんなはどうした?どうする?」)
この数字から分かるように、大多數の女性が振袖を選んでいるのが現状です。
しかし、逆に言えば約1割の女性は振袖以外の服装を選んでいるということになります。
服装の多様化が進む現代において、振袖を着ないという選択も決して珍しいものではなくなってきています。
その理由は人それぞれです。
振袖を選ばない理由の例
- レンタルや購入、着付けにかかる費用を抑えたい
- 着物の締め付け感や動きにくさが苦手で、一日中着ているのが辛い
- 事前の準備や当日の早朝からの着付けが負担に感じる
- 可愛らしい振袖よりも、クールで自分らしい個性的な服装がしたい
近年ではSNSなどを通じて多様な価値観に触れる機会が増えたことも、伝統にとらわれず自分らしいスタイルで参加する人が増えている一因かもしれません。
女性の服装で振袖以外は何がある?
振袖や訪問着以外で成人式に参加する場合、どのような服装が選択肢になるのでしょうか。
それぞれの魅力と特徴をご紹介します。
袴(はかま)
卒業式のイメージが強い袴ですが、もともとは儀式などで着用される正式な礼装であり、成人式にもふさわしい服装です。
振袖よりも足さばきが良く動きやすいのが特徴で、凛とした知的な雰囲気や、大正ロマンを思わせるレトロなスタイルを演出できるため、近年人気が高まっています。
上に合わせる着物は、振袖よりも袖の短い「小振袖(二尺袖)」が一般的です。
スーツ
動きやすさや実用性を重視する方に選ばれているのがスーツです。
就職活動や入社式、卒業式など、成人式後も様々な場面で着回せるという大きなメリットがあります。
地味なリクルートスーツの印象にならないよう、インナーをフリル付きのブラウスにしたり、胸元にコサージュをつけたり、パール系のアクセサリーで華やかさをプラスするのがポイントです。
最近では、スカートだけでなくパンツスーツでスタイリッシュに決める方も増えています。
ドレスやワンピース
結婚式のお呼ばれで着るような、フォーマルなパーティードレスやワンピースも選択肢の一つです。
着付けの必要がなく、式典後の同窓会や二次会にもそのまま参加しやすい手軽さが魅力です。
ただし、成人式は公的な式典なので、肩や背中が大きく開いたデザインや、丈が短すぎるスカートなど、露出の多いデザインは避けるのがマナーです。
必ずジャケットやボレロなどを羽織り、フォーマル感を意識しましょう。
成人式に私服で参加するのはありなのか?
成人式の服装に厳格なルールはなく、「正装でなければならない」という法的な決まりも基本的にはありません。
そのため、結論から言えば私服で参加すること自体が、直ちにマナー違反として咎められるわけではありません。
実際に、毎年ごく少数ですが、ご自身の判断で私服で参加する人もいるようです。
ただ、その選択をする前に、忘れてはならない重要な点があります。
それは、成人式が「大人としての自覚を深め、社会の一員として祝福されるための公的な式典」であるという事実です。
市長や来賓の方々も礼服で臨み、会場は厳粛な雰囲気に包まれます。
その中で、ダメージジーンズやスウェット、露出の多い服装など、あまりにも場にそぐわないカジュアルな格好は、悪目立ちしてしまったり、記念写真で一人だけ浮いてしまったりと、後から気まずい思いをする可能性があります。
「私服」でもTPOを意識することが大切
もし様々な事情から私服で参加する場合は、フォーマルな場であることを最大限に意識し、清潔感のある上品な服装を心がけましょう。
例えば、きれいめのワンピースにジャケットを羽織る、上品なブラウスにスカートを合わせるなど、オフィスカジュアルやセミフォーマルに近いスタイルを選ぶのが無難です。
ご自身の門出を清々しい気持ちで祝うためにも、周囲への配慮を忘れないようにしたいものです。
成人式に訪問着はおかしい?まとめ
この記事では、成人式で訪問着を着ることがおかしいのか、という疑問について多角的に解説しました。
最後に、記事全体の要点をまとめます。
- 成人式に訪問着を着ることはおかしくない
- 訪問着は未婚・既婚を問わず着られる準礼装
- 振袖は未婚女性が着る最も格式高い第一礼装
- 主な違いは袖の長さと柄の豪華さ
- 大多数が振袖のため少し目立つ可能性はある
- マナー違反ではないので自信を持って着て良い
- 母親や祖母から譲られた訪問着を着るのも素敵
- 譲り受けた着物はサイズ確認が最も重要
- 身丈や裄が合わない場合はお直しが必要になる
- 小物は袋帯や草履バッグなどフォーマルなものを合わせる
- 訪問着は結婚式や子供の行事など将来も活用できる
- 振袖以外の服装では袴やスーツ、ドレスなども選ばれる
- 服装に厳密な決まりはないが式典にふさわしい品格は大切
- 自分の納得のいく服装で一生に一度の思い出を作ることが一番
- 迷ったら家族や着物店の専門家に相談する